「おじいちゃんたち無事かな? 健斗はちゃんとやってるかなぁ?
みんなの足を引っ張ったりしてないかな…」
ここは対策本部の置かれている安土中央警察署である。
事件の現場となっている安土城にも比較的に距離が近いこともあって、ここまで一緒に連れてきてもらった稲垣千秋は、祖父・岳玄よりここで待機して待っているように指示されていた。
とは言え、ここにいたところで何も情報は入ってこない。
人質となっている被害者の直接の身内という訳でもないので、千秋は対策本部の中にさえ入れてもらえなかった。
「俊一、楓花ちゃん、二人とも何事もなければいいけど…」
途方に暮れながら、ついボーっとしつつ歩いていると廊下ですれ違った女性とぶつかってしまった。
「キャッ!!」
「キャァッ!?」
驚く千秋と女性。見たところ相手の女性はセミロングの紅い髪、ピンク色の大きな襟付きの半袖ブラウスに、膝上丈の白いスカート(よく見ると巻きキュロット)を穿いていた。年頃は千秋より少し年上くらいの若い女性のようだ。女子大生だろうか?
「ご、ごめんなさい! ついボーっとしてて!」
「私こそごめんね。こっちこそよそ見してたから…」
「いえいえ、そんな…」
その女性は「沢渡 優香」と名乗った。なんでも従弟の少年が今回の事件に巻き込まれており、従姉の両親(つまり叔母夫婦)に付き添って東京から来たのだという。
千秋は自分も自己紹介した上で、対策本部の中に入れない事情を優香に話した。
「そうだったんだ。お友達のことが当然心配よね。
分かったわ! 対策本部の人に知り合いがいるから、その人に掛け合ってきてあげる!」
「本当ですか!? 助かります!!」
「あっ、ちょうど今その人がこっちに来たわ! 斐川さん! こっちこっち!!」
千秋と話していた優香は、今ちょうどこちらに向かって来るブレイバーフォースの制服を着た人間に向かって大声で呼んで手招きする。
「………(この人、ブレイバーフォースの人と知り合いなんだ。すごいなぁ~)」
感心しながら見ていた千秋だったが、斐川は一緒にいた進藤蓮共々千秋と優香の前を素通りしてしまう。
「すまん!優香ちゃん!今取り込み中なんだ!」
「急遽総理が来ることになってな!!」
斐川は振り向きざまに今は対応できないことを謝罪して、進藤と共に走り去ってしまった。
その様子をキョトンとして見つめたままの優香と千秋であった。
「えっ、羽柴総理が…」
「この安土に…??」