第58話『安土城占拠事件 11』

 

帯曲輪でオルカレギウスを退けたものの、イーグレットレギウスとクリスと獅場楓花の3人は次々と更なる敵レギウスやバベルロイドたちに襲われていた。イーグレットレギウス一人だけでクリスと楓花の二人を守りながら敵陣の中を切り開いて進んで行くのは負担が大きく、やがて隙を突かれて楓花にも敵のレギウスの剥いた牙が迫る!?

 

「しまった!?」

 

「楓花さん!!」

 

「キャアアッ!!」

 

だが間一髪、そこに獅場俊一たちが間に合ったのである。

俊一は無我夢中で楓花に迫る敵レギウスに生身のまま突進して突き飛ばした。

 

「…え、お、お兄ちゃん!?」

 

「楓花、無事かッ!?」

 

「獅場君、後ろ!!」

 

「――!!」

 

永原祐樹が叫んで背後の敵レギウスに気が付いた俊一は、考える間もなく妹の目の前でライオンレギウスに変身した。

 

「えっ、お兄ちゃんが…あの時私を助けてくれたライオンレギウスさん…!?」

 

「楓花……」

 

今は迷っている暇はない。ライオンレギウスは敵めがけて突撃する。

一方、イーグレットレギウスはというと?

 

「霧崎さん!」

 

「永原くん!? よかった、無事で…。ところで彼は?」

 

イーグレットレギウスは駆け寄った祐樹にライオンレギウスを指し示す。

 

「大丈夫。詳しい話は後でするけど彼は味方だよ」

 

「それは僕からも保障します」

 

祐樹とクリスからの口添えで、イーグレットレギウスはライオンレギウスのことを味方として認識した。

 

「ライオンレギウス、手を貸すわ!」

 

「誰だかよく分からないけど、俺の妹を今まで守ってくれていたみたいだな。

 礼を言わせてもらうぜ!」

 

イーグレットレギウスとライオンレギウスは、初対面ながらも絶妙なコンビネーションで敵をなぎ倒して行く。

だが、その様子を呆然と見ている楓花の姿があった。

 

「お兄ちゃんがライオンレギウス…。

 クリス様はそのことを知ってたんですか!? どうしてッッ!?」

 

「ごめんなさい楓花さん。いずれ近いうちにきちんと説明します。

 ですが今は君たちの安全が優先です!」

 

クリスは祐樹や晴真、和奏たちと共に楓花を安全な後方まで下がらせる。

そうこうしているうちに、ようやく一通りの敵は全滅した。

 

「お兄ちゃん…」

 

「楓花…」

 

戦いが終わって、互いに見つめ合う兄妹。複雑な感情が絡み合う。


安土城城門に大勢の報道陣がごった返す中、ついに安土に到着した羽柴総理が姿を現した。

それをチャン・クネが出迎える。

 

「ようこそおいでくださいました。羽柴総理」

 

「人質を解放するという約束は守ってもらえるんだろうね?」

 

「それは勿論ですわ。では参りましょう。…おっと、SPの方はご遠慮いただきましょうか?」

 

「君たちは外してくれ」

 

「しかし総理!!」

 

「これは命令だ」

 

「わ、分かりました…」

 

随行して来たSPを下がらせると、羽柴総理はチャン・クネに案内されるまま天守閣へと向かった。


「んんっ、んんーんんッッ!!」

 

「紗奈さん!!」

 

「よかった、無事で!!」

 

人のいなくなった本丸御殿で、鈴見樟馬と森橋悠生ブライトウェルは縛られて放置されていた村舞紗奈を発見した。すぐに紗奈の縄を解き猿轡も外す。

 

「樟馬くん、悠生くん、大変よ! グズグズしてはいられないわ!!」

 

「どういうことなんだ!?」

 

「二人ともゼムノヴィッチ博士が作ったレギウス因子を含んだ血清のことは覚えてるでしょ!?

それを飲まされた人質たちがまもなく一斉に解放されるわ!!」

 

「何だって!?」

 

「そりゃ大変だ!! こうしちゃいられない! 行くぜ悠生!!」

 

「待てよ! 紗奈さんはどうすんだ!?」

 

「私の事なら大丈夫よ! 二人とも早く行って!!」

 

「…分かった!」

 

紗奈を一人残して、樟馬と悠生は城門へと向かった。


一方、錦織佳代と稲垣健斗は、城内のある区画にある地下室に来ていた。

二人の視線の先には、妨害電波を発しているジャミング装置が備え付けられていた。

 

「これで外部との通信を遮断していたのね」

 

「ほら伊賀のお姉ちゃん、さっさと仕掛けるよ!」

 

「OK♪」

 

佳代と健斗は装置に遠隔操作型の爆弾を仕掛け、安全なところまで退避し、スイッチを入れる。

すると凄い轟音と振動が地下から響いた。

 

「これで離れた位置にいる味方といつでも連絡が取れるはずだわ」

 

「やったね!」


羽柴総理が安土城内に入りテロリストに連れて行かれるのと入れ替えに、人質たちの解放が始まった。

人質解放の報せを聞き、沢渡優香と稲垣千秋の二人も城門近くにまで来ていたのだが…。

 

「晴真と和奏ちゃんたちはこの中にいるのかしら…?」

 

「楓花ちゃん、どうか無事でいて!」

 

城門から順に外に出て来る人質たちの中に、見知った顔がいないかどうか近寄って確かめようとする優香と千秋だったが…。

 

「グォォォ……!!」

 

「ガゥゥゥー!!」

 

「きゃぁっ!!」

 

突然、獰猛な獣のような叫び声と人の悲鳴が聞こえた。

解放された人質たちの一部が、まるでゾンビか幽鬼を彷彿とさせる恐ろしい形相になり、理性を失って目を血走らせたつつ、獣のような鋭い爪を立てて見境なく周囲に襲いかかり始めたのである。彼ら人質たちは、監禁中に飲まされた「エナジードリンク」の影響で、疑似レギウスと化しているのだ! たちまち辺り一帯はパニックと化す。

 

「キャアアッ!!」

 

「千秋ちゃん、危ないッッ!!」

 

「グガァゴゴォォ~!!!!!!」

 

逃げ惑う群衆に押し倒されて転んでしまった千秋を疑似レギウスの1体が狙う!

それを思わず立ち塞がるようにして庇う優香!

果たして二人の運命は!?


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