第22話『光平とブレイバーフォースの邂逅』

作・おかめの御前様

 

安土市内で、レギウスによる人質立てこもり事件が発生!
犯人のベアレギウスは通りすがりの幼い子供を人質に取り、空きビルの最上階に籠城。

直ちに斐川喜紀隊長率いるブレイバーフォースが出動して空きビルを完全に包囲するが、事態は膠着状態に。

 

「隊長、このままでは埒があきません。強行突入しましょう!」

 

「ダメだ! 人質の子供の命を最優先にするんだ」

 

「相変わらず隊長は甘いッスね…」

 

自身の出した強硬策を却下され、あくまでも人命優先を至上とする斐川隊長の方針にやや呆れているような態度を取る隊員の進藤蓮。

そこへやじ馬に押し寄せた市民の中にいた牧村光平と名乗る大学生っぽい青年が、

「自分が子供の身代わりに人質になる」と協力を申し出て来た。

 

「申し出は有難いが、民間人を危険に晒すわけにはいかない」

 

斐川は、当然ながら光平の申し出を却下した。

しかし光平は斐川たちが止めるのも無視し、

いとも容易く厳重な包囲網をすり抜けて勝手に空きビルの中に入って行ってしまう。

 

「お、おいッ! 君、何処へ行くんだ!?」

 

「なんなんだアイツは!?」

 

斐川や進藤たちが困惑して、慌てて光平の後を追いかける中、

一方の光平は早くもビル最上階でベアレギウスと対峙。

 

「グォォォ!! なんだてめえは!? どこから入ってきやがった!?」

 

「人質なら俺が代わるから、その子を解放しろよ。子供を人質に取るなんて卑怯じゃないか?」

 

「そうだな、そんなにお望みならお前も二人目の人質にしてやるぜ!」

 

ベアレギウスの注意が前方の光平に向いて人質の子供から離れた隙に、

背後にある窓の外側に張り付いて様子を伺っている斐川=ファルコンレギウスと進藤=ジャッカルレギウスに向けて光平は密かに目線で合図を送る。

 

「アイツ…いまがチャンスだと言っているのか?」

 

「よしっ、行くぞッ!!」

 

内部へと突入したファルコンレギウスとジャッカルレギウスは、

すかさず人質の子供の身柄を確保することに成功した。

 

「今までよく頑張ったな! 偉いぞ! もう大丈夫だ! 

 さあ、お父さんとお母さんのところへ帰ろう!」

 

「うえ~~~んっっ!! こわかったよぉぉ~~!!」

 

「畜生ッ!! 嵌めやがったなぁぁッッ!!」

 

「危ないッ!?」

 

逆上したベアレギウスは鋭い爪を突き立て光平に襲い掛かる。

ところがなんと光平は生身の身体のまま軽々とベアレギウスの巨体を一本背負いで投げ飛ばし、

軽くねじ伏せて取り押さえてしまった。

 

「……信じられない。生身の人間がレギウスと互角に戦うなんて!?」

 

「とりあえずとどめを刺しましょう」

 

ジャッカルレギウスはベアレギウスの息の根を完全に止めようとするが――

 

「待て! もうコイツに戦意はない! 殺す必要はないはずだ!」

 

「チッ……」

 

寸前で光平に制止され、不満ながら矛を収めるジャッカルレギウス。

こうして光平の機転と活躍で、人質の子供は無事に救出。犯人のレギウスも検挙され事件は解決した。

後で取り調べで判明したことだが、ベアレギウスの正体は安土市内でも悪質で有名な反社会的暴力集団・半グレグループの一員だったということだ。

 

「事件解決にご協力ありがとうございました!……と、言いたいところなんだが」

 

「お前のやったことは明らかな公務執行妨害だ! これからブレイバーフォース基地で取り調べを受けてもらう!」

 

「いいですよ。俺もちょうどブレイバーフォースの基地に用があるところだったから…」

 

「???」

 

「???」

 

特に反論や抵抗することなくあっさり任意同行に応じた光平の態度に、斐川も進藤も頭の中は?状態。

そしてブレイバーフォースの基地に連行された光平への取り調べが始まった。

尋問を担当するのは、光平に強い不信感を抱いている進藤だ。

しかし光平はのらりくらりと進藤の厳しい追及をかわす。

 

「東京の大学生が、なんでわざわざ安土市に来ていた?」

 

「だから何度も言ってるじゃないですか。たまたま休みだったんで観光ですよ。

 再建された安土城も一度見てみたかったし♪」

 

「さっきからへらへらと笑いやがって! ふざけてるのか!」

 

ところが上層部からの圧力がかかり、光平はあっさり釈放されてしまう。

そして光平が基地から帰る直前、進藤は基地内の廊下で光平とブレイバーフォース日本支部参謀本部長・松井が親しげに話している現場を偶然目撃する。

 

「松井本部長とあの野郎がどうして…??」

 

咄嗟に物陰に隠れて、光平と松井本部長との会話を盗み聞きする進藤。

よくは聞き取れなかったが、松井の口から「君(光平)が首相官邸から要請を受けて云々~」と話している部分だけはどうにか聞き取れた。

 

「牧村光平、奴は一体何者なんだ…?」

 

この日から進藤は、牧村光平という青年の素性と過去を独自に調べ始めた。